お盆は日本だけの風習?“神主”が語る日本のお盆とは
目次
ご先祖様を大切にするのはなぜ?
8月に入り、「お盆(ぼん)」の時期が近づいてきました。ご存知の通り、お盆とはあの世にいるご先祖様が、神様から許可を得てこの世に帰ってくる期間です。年に1度ですから、感謝を込めて供養しますよね。
しかし、実はこの文化が日本特有のものであると知っている方は少ないのではないでしょうか。
お盆は仏教の文化ですが、正統な仏教には先祖を崇拝するという教えはありません。 実際、仏教発祥の地インドでは、先祖が子孫の元へ帰って来るという考えはないのです。ですから、日本のお寺に先祖をまつるお墓があることを知ると、インド人は驚いてしまいます。
では、なぜ日本人はご先祖さまを大切にするのでしょうか?
その理由はなんと、神道にあります。
ご先祖さまを供養し崇拝する文化は、日本の古代神道から生まれました。古い歌に、こんなものが残っています。
私たち人間は祖先に基づき、祖先は神に基づくからこそ祖先を大切にする。
古代日本人は、「自分達がこの世に存在するのは、祖先のおかげである」と考えていました。この先祖崇拝 が今の神道を形づくっているのです。
その思想に中国から伝来してきた仏教が合わさり、現代の仏教に発展してきました。ですから、私は日本の仏教のことを「神道仏教」 と呼んでいます。
そんな日本のお盆は、ご先祖さまたちが「やっと1年ぶりにこの世に来られるぞ!私たち(先祖)を、子孫が供養してくれるぞ!」と、楽しみにしている期間なのです。ご先祖様は仏壇のお位牌(いはい)に降り立ち、一年ぶりに子孫との交流を楽しみます。
しかしそんな束の間の楽しみに子孫が家にいないと、ご先祖様たちはかなり悲しんでしまいます。ご先祖さまを悲しませないためにも、お盆の期間は田舎に帰り、仏壇に手を合わせる伝統をぜひ今後も守っていってください。
ちなみに仏壇があってもお位牌がないと、子孫である皆さんの肉体にご先祖様がついてきてしまいます。 お盆になるとボーッとしたり、やる気が無くなってしまう人は要注意!是非、ご先祖さまのお位牌を置いてみてください。
以上、お盆についてお話ししました。
日本神道の考え、それは、先祖の、先祖の、先祖は、神様なんだという考えです。その先祖信仰は今日のお盆の文化にも紐づいているのです。
神社Tips!
お盆は、実は8月だけに行われるものではありません。7月のお盆を新盆(にいぼん) と言い、8月のお盆は旧盆(きゅうぼん)と言います。お盆の期間は7月、8月ともに、13日から16日の4日間です。
八百万の神
仏教は釈迦(しゃか)の一つの教えを信じていますよね。キリスト教やイスラム教も一人の神様を信じているので一神教(いっしんきょう)と言います。
では、神道の神様はどれほどいると思いますか?
答えは、800万です。
えっ!神様が800万(柱)もいるの?なんて思う方もいらっしゃるかと思いますが、これは本当なのです。800万を「八百万」と書いて、「やおよろず」と言います。やおよろず、とは、日本の神さまの多さをあらわすともいわれます。
さらに、日本の神社の数は8万社あります。なんとその数、コンビニ以上!( コンビニは5万軒)そんなに大量にいる神様のトップは、一体どんな神様なのでしょうか。
天照大御神
私が仕事で「祝詞(のりと)」を奏上するとき、「八百万の神々〜(やおよろずのかみがみ〜)」と言います。その日本の八百万の神、その上位にいらっしゃる神さまをみなさまは知っているでしょうか。
日本の最高神は「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」 という女性の神なのです。
天照大御神とは?
神道において、日本の最高神とされている神様です。 伊邪那岐神(いざなぎのかみ)が黄泉国から戻り、左目を洗うと天照大御神が出現したと云われます。その後伊邪那岐神に命じられて天上界を収めるようになりました。
有名な逸話は天岩戸開き神話。弟の素戔嗚尊(スサノオノミコト)の乱暴狼藉を嘆いて天岩屋戸(あめのいわやど)にこもってしまいました。太陽神の天照大御神が隠れてしまえば、世の中が暗くなり、悪の蔓延る事になってしまいます。しかしその後、天岩屋戸の前で太陽の復活を祈る儀礼が行われ復活しました。
地上を治める者を決定する際には天照大御神の孫である瓊瓊杵命(ににぎのみこと)が指名されました。瓊瓊杵命のはるか子孫が、今上天皇陛下となります。
では、この天照大御神さまにごあいさつしたい時は、どこの神社に行けば良いのでしょうか?
天照大御神さまに会える神社。それは、三重県の伊勢神宮(正式名称:神宮(じんぐう)) です。
伊勢神宮の中でも、正宮(しょうぐう)である内宮で、天照大御神さまに真剣にお祈りすると、天照大御神さまにお会いできます。
ただ、天照大御神さまにお祈りする際は少し気をつけてください。
多くのみなさまは神さまにお願いしますよね。神さまは、お願いされるためにいらっしゃいます。しかし、伊勢神宮の、中でも天照大御神さまには、昔から個人的なことをお願いしないことになっているのです。
天照大御神さまは、皇室の先祖です。伊勢神宮は、皇室の奥の院となるわけです。日本の大宮司である天皇陛下は、毎日、日本の平和と世界の平和をお祈りされています。みなさまも天照大御神さまには「日本と世界に平和の関係が構築されますように」とお祈りください。
8月の例祭がある神社は?
8月はお盆のイメージが強いですが、日本全国に8万社も神社がありますと、毎月どこかの神社でお祭りが執り行われています。今回は8月に行われるお祭り(例祭) をご紹介します。ぜひお盆期間中でも神社に足を運んでみてください。
戸隠神社
戸隠神社|天照大御神と「天岩戸開き神話」ゆかりの神社
戸隠神社では8月14日に中社、8月15日に奥社、8月16日に宝光社、8月18日に火之御子社で太々神楽(だいだいかぐら)が献奏されます。太々神楽の舞の種類はなんと10種類!上記の例祭ではその内、天の岩戸開き神話にちなんだ数種類の舞を拝観できます。おすすめは中社と宝光社。一般の参拝者にも見やすく、アクセスもしやすいので、舞を観覧したい方には最適です。緑に覆われた神社で、心を清める夏はいかがですか。
戸隠神社
ご利益
開運、心願成就、五穀豊穣、スポーツ必勝
アクセス
長野駅7番乗り場から「ループ橋経由戸隠高原行き」に乗車し(約1時間)行きたい社殿に合わせ、「戸隠宝光社」「戸隠中社」「戸隠奥社入口」で下車
公式HP https://www.togakushi-jinja.jp
三嶋大社
三嶋大社|源頼朝が必勝祈願に参拝!三嶋大祭りは市を上げての大イベント
源頼朝が源氏の再興を祈願した神社として有名な三嶋大社では、毎年8月15日〜8月17日に三嶋大祭りが行われます。
県内外から人が集まり、30万人以上を動員する日本屈指の夏祭りですが、その魅力も目白押し。三島市伝統の祭囃子、「シャギリ」で迎える勇壮な山車はまさに圧巻!
2日目には頼朝の逸話にちなみ、「頼朝公旗挙げ行列」が行われます。例年、人気俳優が源頼朝役に選ばれ、今年(2022年現在)はNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」出演の大泉洋さんが頼朝公に扮します。
三嶋大社
ご利益
商売繁盛、五穀豊穣
アクセス
・JR東海道新幹線、東海道線「三島駅」から徒歩約15分
・伊豆箱根鉄道「三島田町駅」から徒歩約7分
公式HP http://mishimataisha.or.jp