10月の年中行事 | 神道でもっとも重要な「神嘗祭」とは

10月の年中行事 | 神道でもっとも重要な「神嘗祭」とは

意外と知られていない10月の年中行事。なにげなく行っている「衣替え」は実は制度だった?日本のハロウィン(収穫祭)、神嘗祭も深く紹介します。

10月の年中行事とは?

2022年の10月の祝日は 1964年(昭和39年)に東京オリンピックの開会式が行われた10月10日にちなみ、「スポーツの日」がありますね。

その他は特に年中行事などはないと思われがちですが、実は神道において10月はとても大事なのです。まずは季節が完全に切り替わり、皆さんの装いも変化する「衣替え」。そして日本において最も重要な収穫祭、「神嘗祭」が伊勢神宮で行われます。

10月の年中行事について、日本古来の視点で解説していきましょう。

10月1日の衣替え

衣替えのイメージ画像

10月になるとそろそろ寒くなり、衣替えを始める人も多くなりますよね。衣替えなんて各々のタイミングで行うものかとお思いでしょうが、実は江戸時代には衣替えの日が完全に決まっている「制度」だったことをご存じでしょうか?

そもそも衣替えが発足したのは中国。中国では、旧暦の4月1日に冬から夏の衣類へ替え、 10月1日に夏から冬の衣類へ替える風習がありました。日本でもこの風習を取り入れ、「更衣(こうい)」と呼んだことから衣替えの風習が始まったのです。

しかし「更衣(こうい)」という言葉は、日本では天皇に仕える女官の職名でも使われていたため、分かりやすく「衣替え(ころもがえ)」に変化しました。

室町時代から江戸時代の初め頃は、年に2回、夏と冬の衣服を替えるだけでしたが、江戸幕府によって武家では四季に応じて年4回の衣替えが制度化され、衣類の種類や着用する期間が細かく定められることになりました。

現在は、夏服へ衣替えをする6月1日と、冬服へ衣替えをする10月1日の年2回が一般的になりました。現在の学校で10月1日から冬服着用期間に入るのは江戸時代からの名残というわけですね。

10月17日神嘗祭|伊勢神宮

10月は神社界にとって、最上のお祭りがある月です。それは、伊勢神宮の「神嘗祭(かんなめさい)」です。

伊勢神宮最大の祭り、神嘗祭とは?

伊勢神宮の内宮と外宮

「神嘗祭(かんなめさい)」とはその年に収穫された新しい穀物を最初に天照大御神(あまてらすおおみかみ)に供え、秋の実りに感謝し、皇室の繁栄、五穀の豊穣、国家の発展、並びに国民の平安を祈願する収穫祭です。

伊勢神宮のお社は、内宮・外宮をはじめなんと125社ありますが、神嘗祭では内宮・外宮の両正宮のお祭りのあとに、25日まで、別宮を始めすべてのお社でお祭りが行われます。

伊勢神宮は年間1500回もお祭りがありますが、その中でも最も重要なお祭りだというのも頷けますね。

神嘗祭スケジュール

■外宮(豊受大神宮)
由貴夕大御饌 10月15日(土) 午後10時
由貴朝大御饌 10月16日(日) 午前2時
奉 幣    10月16日(日) 正午
御神楽    10月16日(日) 午後6時

■内宮(皇大神宮)
由貴夕大御饌 10月16日(日) 午後10時
由貴朝大御饌 10月17日(月) 午前2時
奉 幣    10月17日(月) 正午
御神楽    10月17日(月) 午後6時

由貴大御饌(ゆきのおおみやけ)とは

由貴大御饌(ゆきのおおみやけ)とは「清浄で立派な食事」と言う意味で、神宮の神田で栽培された新穀で作られた御飯(ごはん)・御餅(おもち)・神酒(みき)、そして、海の幸、山の幸をお供えします。

奉幣(ほうへい)とは

奉幣(ほうへい)とは、神々への捧げものである幣帛をお供えすることです。神宮では五色(青・黄・赤・白・黒)の絹の反物(たんもの)などがお供えされます。

一般人には隠される神嘗祭の儀式

721年から続く、収穫祭たる神嘗祭。一般人には見ることのできない秘密の儀式であり、世界的にも貴重な文化です。

伊勢神宮の内部では、由貴大御饌と奉幣を中心として、興玉神祭(おきたましんさい)、御卜(みうら。祭主以下の神職が神嘗祭の奉仕に適切であるかを神様にお伺いする儀式)、御神楽などの諸祭を行います。

10月17日には、天皇陛下が皇居にある水田で刈り取った稲が御献進され、同日に天皇陛下も皇居から祈りを捧げます。2022年に稲刈りをされた品種は、うるち米のニホンマサリと、もち米のマンゲツモチ計20株。その稲穂(御初穂)は、伊勢神宮の神嘗祭に奉献されることになります。

また、各地の農家から寄せられた懸税(かけちから)と呼ばれる稲束が奉献されます。

翌日18日正午には、天皇陛下が派遣した勅使(ちょくし)を神宮に迎え、奉幣の儀を奉仕します。

日本の収穫祭と西洋の収穫祭

神嘗祭は神道で最も格式高い伊勢神宮で行われ、天皇陛下も参加する非常に重要なお祭りです。今は西洋の収穫祭(ハロウィン)の方が広まりつつありますが、日本の神様は、そんな現場に寂しさを感じているかもしれませんね。せめて儀式の一端を知ることで、10月17日は文化を尊ぶ日にしてみてもいいのではないでしょうか。

暦Tips!

9月10日は十五夜(中秋の名月)は有名ですが、意外と知られていないのは10月8日に見れる「十三夜」の名月。十五夜は中国発祥の風習ですが、十三夜の月見は日本発祥です。十三夜は栗や豆の収穫祝いでもあり、月見団子と一緒に栗や豆を供えて食べる風習があります。ゆえに別名を「栗名月」「豆名月」といいます。

また、実は十五夜だけを鑑賞することを片見月といい、縁起が悪いと言われています。十三夜までしっかり鑑賞して、月のパワーをいただきましょう。

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西邑清志
にしむらきよし

平安時代(貞観年間・西暦859年)から続く神社祠官の家系に生まれ、國學院大學神道文化学部神道文化学科神職過程卒。大學卒業と同時に神社本廳から神職としての階位、正階位を受階。神道・神社参拝に関するコンサルティング業務、日本の伝統・文化等の学びの場を広げている。神職として都内神之宮にて諸祈願等を斎行する。

【執筆】
『今こそ本気の神社まいり』(主婦の友社)
『みんなの神さま 神社で神さまとご縁をつなぐ本』(永岡書店)
『あなたの運がよくなる!神さまへの願いの届け方』(かんき出版)
『幸せの神さまとつながるお掃除の作法』(青春出版社)

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